アコーディオン修復記-8-今までの作業からの方向転換 2005,4/18


これまで国内でアコーディオンの新品部品や相当品を集める方法を探していましたが、
思った以上に流通経路がなく手軽に手に入れることが難しいことがわかりました。

そして、チューニングの技術をヨーロッパまで学びに行っている人もいるそうです。
日本でも100年近くも古くから久しまれている楽器なのでもう少し道がひらけているかと思っていましたが、
実際はそうじゃなかったんですね・・・・
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そんなわけで、今まで色々と情報集めしても疑問や難問ばかりでまったく前に進めないので、ちょっと寄り道をしようかと思います。
我が家には今回修復に挑んでいるfrontaliniの他に、使われていない2台のMMLと1台の変なアコーディオンがあります。
そのMMLを2台を使い、練習を兼ねてMMMのミュゼットアコーディオンを組み立ててみたいと思います。


ーチューニングについて机上の段取りー

・調音に必要な工具を仕入れる。
・どこをどうすればチューニングできるか実験。
・すべてのリードの位置を確認してカステッロとリードに音の名前をマーキング
・リードを整理しておく所を作る。
・必要なリードを取り外す。
・リードの取り付け
・チューニング
・完成


チューニングについて

まずはチューニングについて色々と研究をしてみました。
しかし、これにはまいりました。また奥の深いこと深いこと・・・

色んな説や情報がある上に自分自身にリードのチューニングの経験が無いのは最大の不安要素です。
こういう場合、
闇雲にリードをいじって実験をするには部品と知識が無さ過ぎるので、まずは12平均律と3つのリードの離調のについて調べました。

(資料)

●12平均律の表●
まずは、440Hz、441Hz、442Hzの+20cextと-20centが割り出せるようにEXCELで表を作ってみた。
こんな感じ

●アコーディオンの離調について●
musetteは基準音(clarinet)に対して、別のリードを高音及び低音に調整した調音方法である。
離調(detuning)はビブラートを発生させます。
この調律はヨーロッパの伝統的な民族音楽に基づいたもの
detuningはclarinetに対して"cents"で表現され、1centsは半音の1/100です。
十二音律(半音音階)では1200cents/12=100cents変われば半音変わったことになる。

(-N=数値分低く , 0=基準音 , +N=数値分高く)
(MMの場合)0, +Ncent
(MMMの場合)-Ncent, 0, +Ncent
(参考資料)
Unison (one reed set only) 0cent
French Canadian 5cent
Cajun 10cent
Tex-Mex/Polka 15cent
Italian/French 20cent
Irish 25cent
(注意:上記の資料は正確だという確信がありません。)

平均律でチューニングすると理論上は正確に分割された周波数にチューニングされるわけだけど、
実際に自分にとって心地よい響きか(気持ちいいか)は別問題かもしれない・・・
答えがないのがアナログ楽器の醍醐味ですね。
自分の歌のつもりで、感性的に感受性豊かに歌えるチューニングでありたいですね。
このあたりは演奏しながら微調整になると思います。

チューナーについて

とりあえず、音響用に使っているFFT周波数検知ソフトで440Hzの音叉(2本あるので両方で試す)を計測
(マイクはSM57やMXL2003を使用、オーディオカードはASIO対応したもの。入力方法は:マイク>コンピューター(アナログ入力)
ところが、はじめから問題発生

↑「44.1Khzの16bit及び24bit、ソフト側のサンプルデータ数2048」ではMAX430.7Hz。

↑「44.1Khzの16bit及び24bit、ソフト側のサンプルデータ数4096」ではMAX441.3Hz。

↑「44.1Khzの16bit及び24bit、ソフト側のサンプルデータ数8192」ではMAX436.7Hz。

●マイク>デジタルミキサー44.1Khz/16bitで出力>コンピューター(デジタル入力、44.1Khz/16bitで受け)
「ソフト側のサンプルデータ数4096」でも441.3Hzの結果になった。
上の画像のように設定によって結果が違うし440Hzと言う数値は一つもありませんでした。(^^;)
実験した3台のコンピューターだけでなく、他に所有している4台を使って計7台で試してみましたが結果は同じ。
おかしいと思って、周波数検知の範囲を400Hz〜430Hzの範囲に限定して、MAXの数値をよく見ていると飛んでいる数値があることが判明しました。

FFTについてさらに調べているうちに、どうやら飛んでいる数値はソフトウエアの解像度設定によるものと判明しました。
FFT検知ソフトにおける、周波数の解像度についてまとめてみましたので、参考までに掲載しました。
●サンプリング周波数44.1Khzに対するソフト側のサンプルデータ数と周波数の解像度について
たとえば計算式はこんな感じです。

44100÷262144=解像度0.1682281494140625Hz
44100÷131072=解像度0.336456298828125Hz
44100÷65536=解像度0.67291259765625Hz
44100÷4096=解像度10.7666015625Hz
サンプルデーター数を65536にすると、ようやく440Hzの数値が出てくるようになったが、まだ飛んでいる数値があります。

65536でもその程度の解像度なのか・・・
これは実際にやってみればわかりますが、コンピュータの動きを見ていると、相当の処理能力を必要としていることがわかります。
実用的に使うには、より「高スペックマシン」とより「サンプルデータ数を高く設定できるソフト」が必要そうです。
(CPUが3〜4Ghzくらいほしいと思いました。)

FFT検知については、低スペックなマシンでも使えるような、周波数域を限定して計算するようなソフトがないか調べてみたいと思います。


FFTでの測定は今の段階では納得いかなかったので、手元にあったクロマチックチューナーで音叉を測定してみた。
手元にあった楽器用のアコースティックチューナーではしっかり440Hzが測定できた(^^)!
(A=440Hzにセット)
そして、コンピュータ用のチューナーも↓

しっかり440Hzで表示されている(^^)

これは、検知する周波数を絞ってあるから正確に計測できているんだな。
使用目的がはっきり決まっているものは、精度も高いものですね。

コンピューターのことまで気にしていたら深みにはまりそうなので、今回は楽器用のチューナーを使う事にきめました。
特にコンピューター用のクロマチックチューナーはとても使いやすいです。開発者さんに感謝!
(本当はもう少しcent表示が細かい物が手軽に手にはいればいいのですが・・・)
高性能のチューナーが必要かは、もう少し後で判断したいと思います。


チューニング用工具

2005,4/29
そろそろチューニング用の工具が必要になりそうなので早速手配してみました。

今の段階では、まったく何をどうすればいいか分からない私にとっては、
アコーディオンメーカーで売られている専用工具はこれからのアコーディオンとのお付き合いの為にとてもよいきっかけになりそうです。
さらに使いやすい工具を自作するのは、このあと、身近にあるアコーディオンを修理しているうちに考えるかな

届いた荷物を早速開いてまずは「????????????????!」
だ・大工道具が届いた。具体的に何に使うかまったく分からない!!
しかも!何に使うか説明もない(笑)
この「すべて理解している人用」のようなすがすがしい商品の売り方が楽しすぎる!職人気質万歳!

それでも、試行錯誤しているうちに分かってきました。
・リードのバリ取り用ヤスリ
・調音用ヤスリ
・調音用ノミ
・調音用ケサギ
・ケンとヘラ
・蜜蝋補修用コテ
・keyアーム調整用ヤットコ
・bassアーム調整用ヤットコ
・ナット用ドライバー
・ナット用ドライバー
・-ドライバ
・+ドライバ
・keyやbassのスプリング掛け

おお!なるほど!ほとんどホームセンターなどで用意できる気がするけど、これが改めて探してみると無いものです。
仮に似た道具を加工するとしても、硬い金属を切ったり曲げたりすることは容易じゃありませんので、大変助かりました。
(専用機材がなければ、釘ひとつ満足な形に加工できやしません。)
しっかり焼きも入れてあってとても愛着が湧きました。

そうそう、包丁でもしっかり鍛えてあるものはとても長持ち(孫の代まで)して使いやすいんだよね。シミジミ・・・
(ドライバー類は、機械や木工作業が好きで自分で工具持っている人は自分のもので十分かな・・・)

コテは20Wそのまま(コンピューター基盤のハンダ付ができてしまう)らしいので、あとで内部抵抗を増やして、
適温にしか上がらないように改造する予定。

やっぱり、道具は汎用よりも専用の方が使いやすいです。


他にもこんなのが入っていました。ハーモニカや足踏みオルガンが好きな方用ですね
・オルガンの笛抜き
・ハンマー
・金床(ハーモニカのリード交換時に釘の下に敷いてハンマーで叩く)
・ポンチ(ハーモニカのリードの釘を外す時これを使って釘を外す。ハンマーで叩く)
・穴あけパンチ(ハーモニカのリードに穴あける)
・リードスパナ(ハーモニカのリードの調整用ー大きいタイプ用)
・リードスパナ(ハーモニカのリードの調整用ー標準)
・ハーモニカ用ケンとヘラ
これはアコーディオン用じゃないけど、追々我が家の鍵盤ハーモニカやハーモニカ用に使えるので、とてもうれしい


アコーディオンの工具で明らかに足りないものを発見!
アコーディオンを開く時に使う釘抜きと、リード取り付け時に使う蜜蝋用スポイト



釘抜きはエンドニッパーをドリルで削って自作してみました。
実際に使ってみると、ペンチより格段に具合よくて無くてはならない工具になりそうです。
だけどまだまだやわらかい釘を一切傷付けずに抜くにはもう少し改良の余地がありそうです。
スポイトは、プラスチック接着用に使用されるものを塗料屋さんで購入。
これも、もうすこし太い先端がほしい。

--リアルタイム更新中--
(2005.4/29)色々情報を集め中

楽しい!アナログチックなことは以前から大好きでエンジンやら何やら色々バラしてきたけど、
音楽の事、そして大好きなアコーディオンのこととなると、うれしくて楽しい

さて、ここからはよっぽどアコーディオンが好きでないとできない作業が続きそうです。
場所も必要だし、集中する時間も必要です。
さぞかし本職の職人さんは大変でしょうね。
アコーディオンの職人さんに感謝して大切にしましょう!
これは簡単に調整できる楽器じゃありません。
削る作業は責任重大だし、部品も多く必要だし、時間もかかります。
アコーディオンの修復の職人芸を持っている本業の職人さんが日本に何人いるか。希少価値だと思います
(最近日本でも偉大な職人さんがお一人亡くなられた情報が届きました。)
せめて作業している姿を拝見させていただこうと思っていたのですが・・・
ご冥福をお祈りします・・・

最近のチューニング事情?はA=442Hzということですが、これはまだ判断がついていないです。
実際放送やコンサートで使われている楽器のチューニングもちょっと調べてみたいと思っています。


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