食に思うこと

●味について

人間は環境に適応する能力がありますから、味の濃いもの、油っこいもの、甘いものが続くと、その部分が鈍感になってきます。
よく、「全く味がしなかった」とか「ここは味が薄い」という声を聞きますが、
実はその方が自分の生活で身に付けた鈍感さの表れではないでしょうか。
つまり、繊細な味を感じる味覚が鈍感になっている状態かと思います。

逆に作る側でも同じことが起ります。
例えばタバコを吸っている料理人が作る料理は「塩と油と苦味」が強くなる傾向になります。
食材の持つ繊細な味が分からなくなり、食材の持つ印象的なクセだけしか感じなくなりますので、
食に気をつけるようになると、タバコ飲みが作る料理だとすぐに分かるようになってしまうものです。

僕はそんな味のことをタバコ味の料理と言っています。

さて、その逆に味を薄く質のよい物を意識的に食べていると、
食材が元々持つ塩分やミネラルまで感じられるようになります。
これは良いことなのですが、敏感になればなるほど食材そのものの味が調味料となってきます。
舌が敏感になればなるほど満足したものを手に入れることの難しさに気がつきます。
ここまでくると、どんどん食事が不自由になってくるのですが、楽しい食生活のスタートです。

慣れてくると、外食などで濃い味の物を食べた後従来の食事に戻した時に、
味のどこかが感じられずに味覚が中抜けしていることに気がつきます。
最初は僕もビックリしましたが、いかに強いアミノ酸や油が味覚を鈍感にするか体感することができます。

●食事の量
先に進めば進むほど段階に応じて用意されているもので、困ったことに段階が上がるともう前には戻れなくなります。 食材選びにちょっと失敗すると「あ・・・残念」と思うように・・・。
最初はこれは大変だ・・・と思いましたが、そんなことはないことに気がつきました。

本当に美味しい野菜やお肉というものはそんなに量はいらない。
不思議なもので少量で満足してしまう。この発見はとてもうれしいものでした。

例えば3倍の値段の物を買っても経済を圧迫しない買い方や料理ができるようになってきました。



<<前に/次へ>>